創造力と想像力、それを形にする胆力と繊細さ。
昨年秋にニューヨークに新たにオープンしたHall des Lumières。1912年完成、当時ニューヨークで最も高いビルとして知られ、今もその形を残しているランドマーク、49 Chambers Street 内にできたデジタル・アートセンターです。
◉オープン時の記事:https://gothamtogo.com/hall-des-lumieres-to-open-in-landmarked-49-chambers-street-this-summer-2022/
パリでデジタルアート美術館L’ATELIER DES LUMIÈRESを成功させているCulturespace社がIMGと協働して開館したものだけど、パリの方は鋳造工場だった建物を活用したそう。天井が高い迫力ある空間を確保するには、工場跡地は納得。一方のニューヨークは、銀行跡地。移民たちが渡ってきた当時の面影を残し、銀行の窓口などがそのままに使われています。当時のステンドグラスも現存していて、空間に入るだけで貴重な体験。
◉公式サイトの写真でぜひ当時を感じてください:https://www.halldeslumieres.com/en/discover/place-of-history
今回始まった展示は、シャガール展。パリで大成功を納めて、ニューヨークに来たというもの。
お恥ずかしながら、没入型(immersive)のプロジェクションマッピングでのデジタルアート展を見るのは初めて。子どもと一緒にお邪魔したので、気が逸れていたのが良かったのか、入場するとあっという間に心を持っていかれました。
一つひとつの絵画作品を、自分のペースで見ていくのとは全く違う体験。音楽と共に映し出されては消えていく映像。時に静止画であるはずの絵の一部が動いたり、消えたり、また出てきたりして、その絵のまた奥にあるストーリーを匂わせていく。
私が一番印象深かったのは、描かれた当時の景色が見えてくるような気がしたこと。人物が動くような気がしたり、風景の中での時間軸が見えてきたり。
そこにはもちろん、今回の「作品」の作り手の解釈が入っているわけだけど、それが映像の中に落とし込まれることで、見る前に知らなかったものを自然と感じさせてくれてもいる。良い意味で、時にアートを見る時に求められる「教養」を不要にしてくれている。
例えば、私はシャガールが生きた時代のヨーロッパの景色がピンと来ない。だけど、「こんな風だったのかな?」と自由に想像できるように、刺激を与えてくれる感覚。
(そういえば、子どもも自然とシャガールと作品について学んでいた様子で、帰り道に、「あんな優しそうな人だったんだね」とか、「こういう作品は怖かった」など、しっかりコメントをしていた。)
同時に思ったのが、超有名作品たちを投影しちゃってみたら?大きく、または部分的に動かしてみたら?と考えた人たちの大胆さ、でもそれを相応の知識を持って表現し切ったこと、本当にすごいなと。。。最初は批判もされただろうし、それでもこのクオリティでやり切り、世界に広げている。
改めて考えると、私が今回、素直に展示を楽しめた背景には、(おそらく)知識がある人も納得させるだけの内容面での綿密な計算と、デジタルアートプロジェクションとしての技術的な完成度と、先入観を捨てて楽しめる空間づくりという演出、が揃っていたはず。
だけど、そんなことを一つも考えず、ただ親子で浸って楽しめた。それが素晴らしかったです。
とても良い刺激をいただきました。お誘いいただいたお友達に感謝しつつ。ニューヨークにいらしたら、ぜひ体験してみてください。
◉公式サイト:https://www.halldeslumieres.com/en/chagall-paris-new-york
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