定期的にセッションを受けているKathy Grantの一番弟子 Cara Reeserに「今週末のPilates on Tour、来るの?」と聞かれたのは、開催の3日前のことでした。
「なんですか、それ」と答えた私。
帰りの地下鉄の中で調べてみると、カリフォルニアに本社を置くバランストボディ社が長年主催してきたイベントだということがわかりました。ピラティスの世界に10年以上いながら、私はそれを知らなかったのです。不勉強といえばそれまでですが、同時に、私がこれまで育ってきた環境ではバランストボディ社と接点がほとんどなかった、ということでもあります。
メインの土曜日は満席。でも金曜日だけなら入れる。行くべきか、1日だけでも意味があるか。少し迷いましたが、行ってみることにしました。

ニューヨークでは「縦のライン」でインストラクターが育つ
会場に着いて最初に感じたのは、「ああ、これは私が知っているピラティスの世界とは違う」ということでした。
ニューヨークでピラティスを学ぶと、個人の先生に師事するという形が圧倒的に多いです。長年教えてきたベテランの先生がいて、そこに弟子入りして、教わって、やがて自分も教えるようになる。ジョセフ・ピラティスからエルダーへ、エルダーから次の世代へ。ピラティスの世界でよく使われる「リニエイジ(lineage)」という言葉の通り、縦のラインで繋がっていく世界です。
私自身で言えば、ジョセフ・ピラティス、ロマーナ・クリザノウスカ、ジェニファー・デルーカ(私のボス)、そして私。第三世代と言われる所以です。
ところがバランストボディ社のイベントに行くと、そことは少し異なる「グループ」の存在を初めて体感として知りました。同じ研修を受け、同じマシンを使い、また研修に戻り、教えていく。それぞれが体系だって繋がっている世界。知識としては知っていましたが、その空気を肌で感じたのは初めて。どちらが良いとかではなく、単純に違いがすごく面白く、刺激的でした。

School of American Balletで開かれた理由
今年はバランストボディ社の創業50周年。その記念すべき年の最初の開催地がピラティスの生誕地であるニューヨークだったのは偶然ではないと思います。会場は、Upper Westサイドにある、School of American Ballet(SAB)でした。
SABはNew York City Ballet の養成学校です。アメリカンバレエの師と言われるジョージ・バランシンが礎を築いたNYC Ballet およびSABは、ピラティスの歴史とも深く結びついています。かつてバランシンは、怪我をしたダンサーたちをジョセフ・ピラティスのもとへ送り込んでいました。そのダンサーの一人が、後にエルダー(ジョセフ・ピラティスから教えを受け、ピラティスを継承していった代表的な先生たち)としてクラシカルピラティスを確立し、NYを中心に広く継承することになるロマナ・クリザノウスカです。
開会のスピーチで、バランストボディ社の教育部門トップが最初に名前を挙げたのがロマナだったとき、私は少し驚きました。バランストボディ社はロマナのラインとは異なる系譜から生まれた会社で、ロマナのリニエイジの先生方は多くが彼女が関係が深かったグラッツ社のマシンを使っているから。でも考えてみれば、あの場所で語るなら、ロマナの名前が出るのは必然だったと思います。
エルダーとして紹介されたのは7人。イヴ・ジェントリー、ロリータ・サンミゲル、ロン・フレッチャー、キャロラ・ツィエール、キャティ・グラント、ジェイ・グライムズ、そしてロマナ。その名前を読み上げることで、ピラティスの歴史に光を当てていらっしゃるように感じました。

「逆だった」という話
このイベントの1週間ほど後、別の研修に参加しました。そこにいた25人ほどの参加者のうち、ニューヨークから参加していたのは私ともう一人だけ。他はアメリカ各地やヨーロッパなどから来ていました。
隣になったその一人に、どこで教えているか聞くと、「School of American Balletで」という答えが返ってきました。
元バレリーナで、SABで学び、NYC Ballet で踊り、ヨーロッパでも踊った後、今はSABに戻り、ダンサーの健康・ウェルネスプログラムを統括する部門のトップを務めているとのこと。
「Pilates on Tourで行きましたよ!」と言うと、彼女は「私が呼んだのよ!^^」と。
てっきり、私は、50周年をNYCでやりたい、だからバランストボディ社側からSABに依頼したのだと思っていました。そうしたら、逆で、SAB側から声をかけたのだと。ピラティスとダンスの歴史が交差する場所として、ぜひここでやってほしいと。
その話を聞いたとき、ジンとしました。ピラティスにとって歴史的に意味のある場所として設定された会場が、先方からも彼らの歴史の一部として語られていたということ。素敵だなと思いました。

歴史は、まだ生きている
ピラティスの歴史は、まだ100年ほどのことです。ジョセフ・ピラティスを直接知る人は少ないながらもまだいらっしゃるし、エルダーたちを知る人はまだたくさんいます。逆に生の声がまだまだ聞けるからこそ、人によって語ることが違ったり、矛盾していたりすることもあります。でもそれも含めて、今学べる環境があるうちに、色々な人の話を聞いて、学んでおきたいと思っています。
歴史に縛られすぎる必要はありません。でも、ただ塗り替えてしまうのも違う。最後は自分で判断するしかないけれど、その判断のために知っておきたいことがあるな、と。
Caraの一言がきっかけで飛び込んだ1日。自分が普段いる世界の外に出て、知らなかった景色を見たし、また新しい目で知っていた歴史を見ることができました。またこういう機会があれば、迷わず飛び込もうと思います。



🎁この話はポッドキャスト「ニューヨークでピラティスを教えています」Episode 09🎧でも話しています。よかったら聴いてみてください。
ニューヨークでピラティスを🗽
http://www.typilatesnyc.com
